羽蝶蘭の種蒔き(ウチョウランのたねまき)                             なおの趣味の園芸
 T.交配
種を播くためには、まず、種子を用意しなくてはいけませんが、羽蝶蘭などの種子が売られていることはほとんどありません。自然交配も種子はできますが、できれば気に入った花を交配した方が楽しみが増すでしょう。

左の花は、作業をしやすいように上部の花弁を取っています。花が開いてから2〜3日ほどした花から花粉を取ります。花粉は、かたまりになっていてミツバチなどが蜜を吸いに来たときにハチの頭にくっ付くようになっているので爪楊枝でオシベの根元をこすると花粉槐がとれます。それをメシベの柱頭に付ければ良いのですが羽蝶蘭の場合ぱっと見ただけでは柱頭がどこにあるかわかりません。花の奥にあり写真で取りにくいので、予備の花をばらして確認してみてください。花の構造はサギソウとほぼ同じですので鷺草の交配の写真を参考にしてください。受粉が成功すると子房が大きくなり花がしおれてきます。たくさん種を付けると株が弱って良い種子が取れませんので、一株に3つ以内にした方がよいでしょう。 
    

 野性蘭のダンボール種まき 
蘭科の植物の種には、普通の植物と違って胚乳がありません。そのため、普通の用土に種を播いてもほとんど芽が出ません。芽が出るためには、蘭菌の助けを借りて栄養を貰う必要があるそうです。蘭菌と言うのは特定の菌ではなく蘭の種類によって菌の種類が違ったり、複数の種類の菌が一種類の蘭菌と成る場合もあるそうです。そのため親株の株元に種を播く方法や、蘭菌が多いと言われる春蘭の株元に種を播くことが一般に行われていました。
ところが、羽蝶蘭・紫蘭などの種子をダンボールを混ぜた用土に種を蒔くと簡単に発芽するということが発見された以降、ダンボール種蒔きが普及してきました。
この方法は、ウチョウランでは、かなり成果を上げているようですが、鷺草ではまだ、成功率は低いようです。
 種蒔きの時期
私は、2月下旬〜3月上旬に種蒔きをします。11月ごろ種を播かれる人もあるようです。羽蝶蘭の場合、最低温度を10℃くらい昼間の温度を20℃に保てば1ヶ月くらいで発芽します。
 

U.用意する物

段ボール どこにでもある普通のダンボール。
半分は、用土と混ぜるため、後半分はダンボールのエキスを作るために使います。
野性蘭の種子 10月になると鞘が黄色くなってくるので半分くらい黄色くなったら鞘ごと切り取り乾燥したところで保管します。あまり遅くなると種が飛び散ってしまうので早めに採取します。採取した後は、乾燥した場所に保管します。私は、カメラ用のドライボックスで保管していますが、一般の家庭なら冷蔵庫か、密封できる容器に乾燥剤と一緒に入れて下さい。
用土 ボラ土・鹿沼土・赤玉土・バーミキュライトなど。単用でも混ぜてもかまいません。私は、ボラ土1・鹿沼土1・ピートモス1・バーミキュライト1の割合の用土を使っています。最近は、樹皮堆肥を混ぜることが多くなりました。
苗を蒔く容器 普通の植木鉢で良い。最近は、3.5号のビニルポットを使用しています。
受け皿 やや深めのものが良い。受け皿に水を入れて鉢底から給水します。
イチゴパックの容器なども利用できます。穴の開いていない発砲スチロールのトロ箱なども便利です。
洗面器・バケツ ダンボールエキスを作るために使います。
ポリ袋等 表土の乾燥を防ぐために鉢の上からかぶせるのに使います。受け皿が深い場合には使わなくても良いでしょう。
水苔 なくても良いのですが、使った方が生育が良くなります。乾いた水苔を篩の目にこすり付けるようにすると小さくすることができます。
古土 生育の良い親株の野生蘭が植わっていた土を細かく砕きます。普通のすり鉢を使うのが便利です。羽蝶蘭の場合はなくても発芽することはありますが、古土を混ぜた方が発芽率は格段によくなります。前回種を蒔いて発芽した苗床の古土があれば一番いいです。
遅効性肥料 マグアンプKやグアノなど燐酸分の多い遅効性肥料を少々。使用量は、説明書に書いてある量の半分以下にします。やり過ぎは禁物です。初心者は、使わない方が無難かもしれません。今年からカニ殻粉末を試用しています。
鋏・またはカッター ダンボールを切るのに使います。

V.種蒔き

1. ダンボールエキスの作成。u-tanemaki-0.jpg (135038 バイト)
段ボールを洗面器などの容器に入れ一晩水に漬けておきます。急ぐ場合には、熱湯をかけ冷ました物を使うと1時間くらいで用意できます
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種を播く容器にダンボールを縦に2cm間隔で仕切るように並べ間に用土をいれます。ビニルポットに播く場合にはダンボールを丸めて渦巻状にした方が便利です。昔は、ダンボールを3cm角のチップにしていましたが、ダンボールを小さく切るのは結構大変ですし、ムラもでますので、最近は、小さく切ったダンボールを使うことはほとんどなくなりました。
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ダンボールの仕切りと同じ高さに用土をいれたら、篩でこした水苔を表土が見えないくらいに薄くかけます。一般に大粒の用土を鉢底に入れて中粒、小粒と入れて行きますが、私は全く篩いにかけません。用土の大きさが大豆〜米粒くらいの大きさであればあまり気にしなくてもいいと思います。
水苔はなくても種まきはできますが、水蘚があった方が湿度が保たれることと、水蘚自体に肥料分がありますので苗の生長が安定します。
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種子を鞘から出し、小さじ1杯のすり潰した古土とよく混ぜます。十円玉の右側の粉みたいなのが羽蝶蘭の種です。その右側にあるのが今回混ぜる古土です。羽蝶蘭の種は非常に小さいので厚播きになりやすいので、古土と混ぜることで厚播きを防ぐことができます。1莢で、普通のプランターつくらいに播きます。ばら撒きにします。種が非常に小さいので覆土はしません。厚蒔きににすると苗がひょろひょろになり病気になりやすくなりなります。ビニルポットに小分けして種を播くと、病気で苗が全滅してしまうのを防ぐことができます。
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受け皿にダンボールエキスを皿いっぱいに入れます。数時間するとダンボールエキスは、鉢の中に吸い上げられるのでなくなります。後は、水苔が湿るまで水を足していきます。受け皿が浅い場合には、鉢の上にポリ袋をかけ水苔が乾燥しにくいようにします。受け皿が深めで水苔が湿った状態を保つことができれば、ポリ袋はかけなくても良いでしょう。蓋付の発泡スチロールの箱の場合には蓋を少し空けておきます。密閉すると蒸れすぎます。
水は上からかけると、低いところに流れるので種が偏って発芽する可能性が多くなります。鉢底から水をやる方が無難でしょう。5月中旬になり苗が大きくなると上から水をかけても問題ありませんが、鉢底から吸わせる方が管理が楽です。
6. 芽が出るまで、、窓際などの明るい日陰に置きますが、直射日光が当ると温度が急激に高くなりますので、北側の窓辺やすりガラスにレースのカーテン越しの極やわらかい光に当てます。3月上旬以降に種を播く場合には、暖房などする必要はないでしょう。
7. 芽がでれば、ポリ袋を取りしっかりした苗に育てるため4月末までは直射日光に2〜3時間ほどあてます
 腰水にハイポネックスの2000倍液を使う人もいますが、肥料分が多くなれば、生育は良くなりますが、病気の発生も多くなります。苗立ち枯れ病で全滅してしまうこともあります。早く大きくしたいので肥料をやりたい気持ちは分かりますが、安全性を優先すれば肥料はやらない方が無難です。
8. 5月になると葉がかなり伸びるので腰水の量を減らし、朝水をやれば夕方には受け皿の水がなくなるくらいにします。腰水を入れっぱなしの人もいますが、病気の発生を少なくするにはやや乾燥気味が良いみたいです。
9.

 サギソウの場合、発芽までは簡単です。1週間か10日ほど(約20℃で栽培の場合)で、初期プロトコームの状態になります。しかし、出芽するのは難しい。
 蘭の発芽

 

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2006年3月10日に種蒔きしたもの。5月21日
去年のものに比べると生育かなり良い。
来年には、開花する球根がいくつかできるでしょう。
6月に入ると葉の成長はほとんどなくなります。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


羽蝶蘭の出芽

2005年4月10日  種を播いて約40日後 白い玉ねぎみたいのがプロトコーム。直径は約2mm程度。
置き場所は、室内で、明るさを補足するため20Wの蛍光灯を付けている。夜の最低温度は、約10℃ 昼間は、最低温度15℃に設定している。用土は、古土とバーミキュライト 1:1 ダンボールを渦巻状にいれている。

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4月16日 まだ根は出ていない。この時点でいくらか移植したが結果は良好だった。

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5月10日 写真では分かりにくいが根が出はじめている。この頃までに込み合っているところは、移植するとよい。

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5月10日 水苔播きのもの。表面に水苔を5mmくらいの厚さに敷きその上に種を播くと水苔の間に種が埋もれ、発芽するときプロトコームがかくれるので苗が倒れにい。

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8月15日 大きさはあまり変わっていない。東側の窓辺に置いて鉢皿の水がなくなったら潅水しています。

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1月22日 少し密植ぎみなので球根を掘ってみた。今年の開花は無理だが来年には開花する球根になるでしょう。生育が良い場合には、2年目に花が咲く場合もあります。(この球根で今年2球が咲きました)
種まき床は、今年芽が出なくても翌年に芽が出る場合がありますので、2年目の春まで捨てないで保存しておきましょう。

 
 なぜ、ダンボールを使うと蘭の芽が出るのでしょうか。私の仮説では、ダンボールの中空構造がラン菌の生育を助け、ダンボールに使用している糊がラン菌の栄養源になっているのだろうと推測しています。ダンボールのセルロースがラン菌の栄養源になっているのでは、と言われる人もいますが、私の知人によりますと播種して1ヶ月足らずで発芽するので、この時点では、ダンボールはまだ腐食していないので、ラン菌の栄養源にはなりえないとのことでした。理屈はともあれ簡単に野生ランの播種が出来ることは喜ばしいことです。

 

 

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