樹木の種子の種まき

樹木の種は、普通の草花の種と違って休眠したり、種の寿命が短かったりと樹種によって特徴がありますので、樹種の特徴を理解して種を蒔かないと正常な種でも芽がでないことがあります。

 購入された種  乾燥に弱い種は湿ったピートで保護していますので、種を乾燥させないようにして下さい。すぐに種蒔きが出来ない場合には、常温で保管して下さい。冬場に暖房が入った室内の場合には、冷蔵庫で保管して下さい。果肉の除去が完全でなく、種の表面にカビが生えていることがありますが、種が硬い状態なら問題ありません。
 用土  赤玉土に腐葉土を3割ほど混ぜた一般的な用土が無難です。九州では、赤玉土の値段が高いので、鹿沼土1:ボラ土1:バーク堆肥1の用土を使っています。
最近は、バーク堆肥の値段がかなり安くなったので、腐葉土を使うことがほとんどなくなりました。畑土にバーク堆肥を3割ほど混ぜた用土に種を蒔いても良いのですが、虫が潜んでいる可能性が高いので、土壌消毒をした方が、良いでしょう。土壌消毒をすれば、雑草も生えにくくなりますので、後の除草が楽です。
 容器  種を蒔く容器は、種が少ない場合は、駄音鉢の平鉢を使います。私は、主にプラスチックの育苗箱を使っていますが、ドングリなど種の大きな樹種の場合は、普通の60cmプランターに種を蒔くこともあります。
 蒔き方  樹種にもよりますが、3〜5cm間隔の点蒔きか筋蒔きにします。覆土は、種の大きさの2〜3倍くらいにして下さい。
 置き場所  芽が出るまで、建物北側など日陰に置いて下さい。芽が出るまで、半年から1年くらいかかるものが多いので、日陰に置いて方が水遣りが楽です。種を蒔いたら、冬場でも、1週間に1回くらいは、潅水して乾燥しないようにして下さい。
冬の寒さにあって芽が出る樹種が多いので、暖房が入った室内に置かないで下さい。
なお、種子によっては、鳥に食べられることもありますので、注意して下さい。

つつじ類

 

 さつき・深山霧島・久留米つつじなどのつつじ類は、11月ごろ種子を採取します。乾燥した場所で保存し、3月下旬〜5月下旬ごろに鹿沼土に播種します。

詳しくは、さつきの播種をご覧下さい。

果肉のある種子

桜・真弓・梔子・櫨・梅もどき・桃・柿・
さんざし・山ぼうし・アメリカハナミズキ など

 

果肉のある種子の場合は、果肉に発芽抑制物質が含まれる場合が多いので、果実を水洗いし果肉をしっかり落してからすぐに播種します。発芽するのは翌年の3月ごろなので、日陰に置き、週1〜2回ほど潅水し用土を乾燥させないようにします。すぐに播種できない場合には、水洗い後、湿った砂などと一緒に袋に入れ常温で保存します。乾燥させると極端に発芽しにくくなります。

老爺柿 この種は、樹木の種子の中でも大きい方なので管理さえ良ければ100%近く発芽します。種子の周りの果肉が取り除きにくいので丁寧に取り去ります。湿らした状態で種子を冷蔵庫で保管し3月頃播けば5月頃に発芽します。他の種子に比べ発芽するのが遅いのでご注意ください。

松類

黒松・赤松・五葉松などは、乾燥させた状態で保存し、発芽が5月中旬と他の樹木より遅いので、4月に入ってから種に付いている羽をとり、水に1晩つけ吸水させてから蒔きます。約3週間で発芽します。発芽率は比較的良い方です。

蝋梅
種子が6〜7月に熟すので、遅くとも10月までに播種します。普通の樹木と違って、種を蒔いて3週間くらいで芽が出ます。通常は落葉樹ですが、秋に芽が出た場合、暖かい地方では、葉を落とさないで冬を越します。
浜ボウ 芙蓉 葵科の植物の種は殻が硬いので、種を蒔くときに一晩水に付け種が膨らんだもののみ蒔きます。水につけても膨らまないものは80℃くらいのお湯に3分ほど漬けます。
蒔きときは八重桜の咲く頃(4月下旬)がよいでしょう。
2週間くらいで発芽します。
サルスベリ
寒さにやや弱いので、4月下旬になってから種を蒔きます。一般に八重桜の花が咲くころです。約2週間くらいで発芽します。1歳サルスベリは、生育が良いものは、8月には開花しますので、普通の草花感覚で栽培できます。
槭(もみじ)
楓(かえで)

採取後すぐに水に1晩つけ吸水させて播種します。3月中下旬ごろ発芽します。すぐに播種できない場合には、乾燥した状態で保管し、1月末くらいまでに種を播くようにします。または、2月頃湿った砂やピートモスなどと一緒に冷蔵庫に保存し、1ヶ月後にに播種しますと管理が楽です。種子の休眠打破には、1ヶ月の低温する必要があるといわれます。乾いた状態で冷蔵庫に入れても休眠は打破されません。必ず、湿った状態で冷蔵庫に入れてください。
もみじや楓は、発芽温度が低いので冷蔵庫の中で発芽する場合があります。冷蔵庫の中には、2ヶ月以内が良いでしょう。5月に冷蔵庫に入れて6月に播種をしたことがあります。芽は出ますが、3月に播いた場合より生育は劣ります。
種子に付いている羽は、密植して蒔く場合には邪魔になるので取りますが、普通は、取らなくても問題はありません。もみじの発芽は、樹木の種子の中では簡単な方です。
けやき
基本的にはもみじと同じですが発芽は、4月中下旬となります。盆栽にする場合には、種のとがった部分を下にして蒔くと立ち上がり曲がりが少ない苗になります。
街路樹や公園にあるケヤキにたくさんの種が付いていますがほとんど中身が入っていないので発芽しません。中身が入っている可能性は佐賀市内のケヤキでは1%未満でした。水に沈んだ種だけを播くようにします。
姫沙羅
採取後すぐに播種するか、乾燥した状態で保存し、3月上旬までに播種します。4月上旬に発芽します。

その他の雑木類

 

・そろ・小楢などは日陰に起き、採取後すぐに播種します。週1〜2回ほど潅水し用土を乾燥させないようにします。3月下旬ごろ発芽します。発芽率は比較的良いものです。採取後、すぐに播種できない場合には、2月〜3月上旬に播種します。基本的には、もみじの種蒔きと同じです。

 ドングリ類
クヌギ・マテバシイ・コナラ・スダシイなど
 ドングリの種は、乾燥に弱いので入手したらすぐに種を蒔きます。すぐに種を蒔けない場合には、湿った砂など一緒に容器に入れ、冷蔵庫で保管します。マテバシイなどは、9月に入れば実が熟して木から落ちますので、なるべく早く拾って種を蒔くようにします。種のとがった部分から芽が出るので、ポリポットなどに蒔く場合には、種を横に寝かせ、種のとがった部分がポットの中央部に来るようにし種を蒔きます。覆土は、種の直径の3倍くらいにします。クヌギは1週間ぐらいで発根し、3月の終わり頃には、芽が出てきますが、マテバシイは、5月頃にならないと発芽しません。

 つる梅もどき・土佐水木

種子は春になってから種を蒔きます。 発芽率は比較的良いものです

Q:さつきの好月の種を蒔くと好月の花が咲くのでしょうか?
A: 好月同士を交配しても好月の花は咲きません。好月と非常に似た花はたくさん咲きますが、好月とまったく同じという花はまず咲きません。それはさつきの花が色々交配され多様な遺伝子を持っているからです。 一般に種を蒔く草花や野菜は、自家受粉を何代も繰り返し形容の違う苗を排除し、種を蒔けば同じ花が咲くように品種固定させます。しかし、樹木の場合は、交配して良い品種ができれば、挿し木や接木で増やすので品種を固定さてなくても同じものを大量に増やすことができます。樹木の品種物の種子を蒔いた場合、親木と非常に似たものは多く出ますが、全く同じのはでません。全く違う形容のものができる場合もあります。

 

雄木と雌木があるもの 雌雄異株といいます。

梅もどき 蔓うめもどき 老爺柿などがあります。

   
種を播いて何年すれば花が咲くか
同じ樹種でも、品種によって違います。名前に一才と付くのは、普通の品種より花が早く咲きます。
1〜2年 一才サルスベリ 白山吹 
3〜4年 ツツジ・さつき類 くちなし サンザシ 椿 桃 栗 蔓うめもどき 
5〜10年 杜仲 レモン 木瓜 老爺柿 枇杷 
10年以上 藤 りんご 梅 かりん