野性蘭のダンボール種まき
蘭科の植物の種には、普通の植物と違って胚乳がありません。そのため、普通の用土に種を播いてもほとんど芽が出ません。芽が出るためには、蘭菌の助けを借りて栄養を貰う必要があるそうです。蘭菌と言うのは特定の菌ではなく蘭の種類によって菌の種類が違ったり、複数の種類の菌が一種類の蘭菌と成る場合もあるそうです。そのため親株の株元に種を播く方法や、蘭菌が多いと言われる春蘭の株元に種を播くことが一般に行われていました。
ところが、羽蝶蘭・紫蘭などの種子をダンボールを混ぜた用土に種を蒔くと簡単に発芽するということが発見された以降、ダンボール種蒔き方が普及してきました。
この方法は、ウチョウランでは、かなり成果を上げているようですが、鷺草ではまだ、成功率は低いようです。
種蒔きの時期
私は、2月下旬〜3月上旬に種蒔きをします。11月ごろ種を播かれる人もあるようです。羽蝶蘭の場合、最低温度を10℃くらい昼間の温度を20℃に保てば1ヶ月くらいで発芽します。
用意する物
段ボール | どこにでもある普通のダンボール。 半分は、用土と混ぜるため、後半分はダンボールのエキスを作るために使います。 |
野性蘭の種子 | 10月になると鞘が黄色くなってくるので半分くらい黄色くなったら鞘ごと切り取り乾燥したところで保管します。あまり遅くなると種が飛び散ってしまうので早めに採取します。採取した後は、乾燥した場所に保管します。 |
用土 | ボラ土・鹿沼土・赤玉土・バーミキュライトなど。単用でも混ぜてもかまわない。私は、ボラ土1・鹿沼土1・ピートモス1・バーミキュライト1の割合の用土を使っているます。 |
苗を蒔く容器 | 普通の植木鉢で良い。最近は、3.5号のビニルポットを使用しています。 |
受け皿 | やや深めのものが良い。受け皿に水を入れて鉢底から給水します。 イチゴパックの容器なども利用できます。穴の開いていない発砲スチロールのトロ箱なども便利です。 |
ポリ袋等 | 表土の乾燥を防ぐために鉢の上からかぶせるのに使います。受け皿が深い場合には使わなくても良いでしょう。 |
水苔 | なくても良いのですが、使った方が生育が良くなります。篩の目に押し込むようにすると小さくすることができます。 |
古土 | 生育の良い親株の野生蘭が植わっていた土を細かく砕きます。普通のすり鉢を使うのが便利です。羽蝶蘭の場合はなくても発芽することはありますが、古土を混ぜた方が発芽率は格段によくなります。 |
遅効性肥料 | マグアンプKなど燐酸分の多い遅効性肥料を少々。使用量は、説明書に書いてある量の半分以下にします。やり過ぎは禁物です。初心者は、使わない方が無難かもしれません。 |
鋏・またはカッター | ダンボールを切るのに使います。 |
1.段ボールを洗面器などの容器に入れ一晩水に漬けておきます。(ダンボールのエキスが出た水を作るため、急ぐ場合には、熱湯をかけ冷ました物を使います。)
2.種を播く容器にダンボールを縦に2cm間隔で仕切るように並べ間に用土をいれます。ビニルポットに播く場合にはダンボールを丸めて渦巻状にした方が便利です。
3.ダンボールの仕切りと同じ高さに用土をいれたら、篩でこした水苔を表土が見えないくらいに薄くかけます。
4.種子を鞘から出し、細かく砕いた古土と混ぜばら撒きにします。種子が小さいので厚蒔きにならないように注意します。
5.受け皿にダンボールエキスを入れます。
6.鉢の上にポリ袋をかけます
7.芽が出るまで、、窓際などの明るい日陰に置きますが、直射日光が当ると温度が急激に高くなりますので、すりガラスかレースのカーテン越しのやわらかい光に当てます。
8.芽がでれば、ポリ袋をとりしっかりした苗に育てるため4月末までは直射日光に2〜3時間ほどあてます
腰水にハイポネックスの2000倍液を使う人もいますが病気がでやすくなるので私は使いません。
サギソウの場合、発芽までは簡単です。1週間か10日ほど(約20℃で栽培の場合)で、初期プロトコームの状態になります。しかし、出芽するのは難しい。
蘭の発芽
なぜ、ダンボールを使うと蘭の芽が出るのでしょうか。私の仮説では、ダンボールの中空構造がラン菌の生育を助け、ダンボールに使用している糊がラン菌の栄養源になっているのだろうと推測しています。ダンボールのセルロースがラン菌の栄養源になっているのでは、と言われる人もいますが、私の知人によりますと播種して1ヶ月足らずで発芽するので、この時点では、ダンボールはまだ腐食していないので、ラン菌の栄養源にはなりえないとのことでした。理屈はともあれ簡単に野生ランの播種が出来ることは喜ばしいことです。
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